SOSトラッキング、ロードクロージャ
佐藤 弘一
チームスバル大分

★はじめに
毎年この時期に北海道に渡るのはこれで3回目。3年前は東京の某チームのサービスの一員として参加しました。私には「近い将来国際ラリーに出場する!」という目標があります。そのため昨年はもっとラリーを知るためにオフィシャルとして参加しました。レキ、車検、トラッキング、コースクロージャとラリーの流れの中で殆ど全ての役務をさせていただき大変有意義でした。そして今年、モータースポーツを嗜む人間にとって願望であり、目標であったWRCに昇格したとの連絡を受け自分で参加するよりも日本初のWRCを成功させるために自分自身何かできることはできないかということで、今年もオフィシャルとしての参加となりました。日本初のWRCが無事成功したことに、力不足ながら自分も 貢献できたことをうれしく思うと同時にこのような機会を与えてくださった皆様方には感謝感激です。
★オフィシャル(山の中)の一日
ラリー中、山の中に入るオフィシャルは、「起床」→「身支度」→「ミーティング」→「コースへ移動」→「SS1回目」→「SS2回目」→「宿舎へ移動」→「就寝」となります。ミーティングの開始がAM3:30です。そのとき朝食を渡れます。コースへ移動し、セッティングを終え朝食を取るわけですが、朝食後は朝の儀式があります。当然コースからかなり離れた場所で絶対に人目につかないような場所で用を足すわけですが、怖いのは熊!、こんな格好で熊に襲われて万が一のことが起きたらかっこ悪いだろうなと思ったりしながら用を足します。SS1回目が終わるとお昼のお弁当が配られます。山の中はラジオもろくに届かず、携帯の電波の届かない場所ですのでお昼ごはんだけが唯一の楽しみになります。SS2回目が終わりスイーパが通過すると我々も撤収になります。みんなでコンボイを組み宿舎へ移動します。そしてお風呂、食事等をして実際に眠りに付くのは午前様。今年はタイトなスケジュールで毎日2〜3時間くらいの睡眠しかとれませんでした。体力的に大変きつかったです。ラリー最終日になりますと、いい加減疲れましてSOSトラッキング中に…。(詳細はSOSトラッキングという仕事で述べます。)しかしながら山全体の取りまとめをしていたリーダクラスの方々にいたっては直ぐに宿に戻らずラリー後コースを廻ったりしていたのでもっと睡眠時間がとれなかったと思います。本当に頭が下がる思いです。
★SOSトラッキングという仕事
1分おきに通過車両確認を行います。通過車両があると次分に通過した車両のゼッケンを報告します。これによりコースアウト車やラップされた車がリアルタイムで把握できます。
SOSトラッキングは、昨年も担当した役務ですので、要領は得ておりました。
しかしながら今年はWRカーは速いスピードでかけぬけるので一瞬しか確認できないためゼッケンを追うだけで精一杯。ゆっくり走りを見物なんてできません。しかも最終日になると疲れもピークに達しSOSトラッキング中についうとうとしまうこともしばしば。通過があると、気が張っていますが、通過がない分は安心してしまってふと気が抜けてそのままうとうと。
中継:「4ポストどうぞ」
我々:「……」
中継:「4ポストぉっどうぞ
我々:「あっ!通過なし」
無線を聞いていますと同じようなやり取りが他のポストでも起こっていたようでした。

★コースクロージャという仕事
SS中の貫通している枝道を他車が入ってこないようにブロックをします。またSS中でトラブルが発生したときに備えます。基本的にコースから20M離れないといけないので車内からだと茂みの中のちょっとした空間からしか通過する車が見えません。でも何も無ければギャラリーできます。無線機から離れることはできないので延長シガーライターコードとかがあるといい場所を陣取ってギャラリーできます。(キャリア付きのワンボックス車の上とかGOOD!)
★WRカーの速さとキレのあるペースノート走行に唖然!
ドライバーが一流というのは当たり前ですけど車の出来も凄いですね。
コーナリングの姿勢や、立ち上がりのトラクションなど、Nの比じゃないです。
Nとは明らかに掻きあげる石の大きさが違います。30センチもあろうかと思われる石が当たり前のように飛んできます。
またペースノート走行ですが、ゼッケンの早い人は、コーナの入り口で一瞬アクセル抜いて姿勢をつくりアクセルONのままコーナーに入って行きます。WRカーの人は完璧。だんだんゼッケンがおそくなるにつれペースノートがあるのに探りながらアクセル踏んだり、(有視界走行)ドライブしてたり(おい!、俺の方が速いぞ)してますね。
★大桃選手の大転倒
ストレート三段ジャンプの場所で、コンビを組むメンバーと通過するエキゾーストを聞きながら「あの音はVTECだね」とか話している矢先でした。甲高いNAの音と供に「ゴン、ゴン」「ガン、ガン」という鈍い音がしました。と同時にエンジン音が消えました。目の前を通り過ぎるはずの競技車が現れません。コースを確認すると、埃が舞っているだけで競技車が見えません。コースに出るわけには行かないので藪を分け入って競技車の確認に行きました。ナビは無事のようでしたが、ドライバの大桃選手が車から降りられない状態。レスキュー、FIVの出動となりました。幸い命に別状が無いということで安心しました。速度域が高いからコースアウトも半端じゃないですね。またN規定のロールバーの信頼度の再確認をしました。大桃選手は縦方向に転倒したみたいですが、車がロールバーの形状に沿って潰れていました。
★メモリアルギャラリー(カメラつき携帯)

大桃選手の転倒現場です。部品を拾っています。

霞む程永遠に続く直線。全車踏みっ切りで
ジャンプしながらかっ飛んで行きます。
大桃選手は着地時にドライブシャフトが折れ
コントロール不能になったようです。

役務遂行中の写真撮影は禁止されています。
これはシェイクダウンの時に取りました。
直後、跳ね石(岩)洗礼を受けます。

これもシェイクダウンの時の1コマです。
●戻る